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ゆうゆう118号

2020年 7月 9日発行

1.新宿区境特集@ 〜意外に知らない境界の世界〜

2.助成していただきました!〜軽量折りたたみスロープ

3.【訃報】


日ごろな一枚

          


梅雨の晴れ間に、お芋掘り。

芋掘りと言えばさつまいもが定番ですが、この時期はじゃがいも。

大小様々、形もバラバラだけど、たくさん収穫しました!




1.新宿区境特集@ 〜意外に知らない境界の世界〜

 巷では疫病が世界を席巻して久しく、その後にもたらされた不景気や陰謀論で大国間の緊張もいや増し、「宇宙から国境線は見えなかった」と言った宇宙飛行士の言葉も今となっては空しいものです。……と、物々しい出だしですが、今日はなんてこと無い区と区の間、区境のお話です。区境は区界とも書き、界という字は「さかい」を意味しますが、世界の界では世、「時間」に対する「空間」でありそこに区切る意味はありません。では地図上に引かれた点線である区境には本当は何があるのか、ここ新宿区の場合を見てみましょう。新宿区は6区に囲まれて総面積は18.22?、まじまじ見ると面白い形です。落合地区を頭として、小さな子どもが描いた犬のような。この形が何によって作られているのか、今回は犬の前足とお尻、区の西と東に注目してみます。


 国や県、そして区の境を決めるものは何かと考えたとき、一番わかりやすいのは地形に基づくものです。例えば山の頂上や湖など、中でも多いのは川や水路でしょうか。新宿区の場合は神田川です。江戸時代初期に飲み水を取る上水として作られたこの川は、三鷹の井之頭池から隅田川まで蛇行し、途中新宿の境を北上しつつ舐めていきます。新宿区の西側、西新宿から高田馬場にかけて境界線は神田川の流れるまま、対岸は中野区です。これは江戸時代に遡り、この辺りが柏木村・角筈村と呼ばれていた頃でも神田川が村落の境界だった様子を古地図で確認できます。しかし、そうすると区の北側、豊島区から文京区の途中までにかけての境界はどうでしょう、豊島区の方は一見神田川に沿うようで、川から引っ込んだり対岸に侵入したりと、ジグザグ境界線が乱れています。文京区の方も半分ぐらいは南に越境しています。何が新宿区をそうさせたのでしょうか。豊島区の方の答えは簡単で、区境に対して川の方が形を変えたのです。神田川の流路は多くは自然の河川を利用したもので、各所が曲がりくねっていました。これは氾濫・洪水が起こりやすくなる構造なので、大正以降工事により修正され、今の形になったというわけです。一方の文京区は古地図を開いて確認しますと神田川では無く、神田川に流れ込んでいた別の小さな川や江戸時代の行政区画等が境目となっていたようです。この辺りの川沿いを歩いてみると三つの区が入り乱れていて奇妙ですが、その混乱だけが過去を伝えているのですね。


         


         


 お次は区の東側を見てみましょう。新宿区の東側面は皇居、かつての江戸城を囲む外濠でもって千代田区と分かたれています。ですが、なだらかな線からボコッと飛び出したところが一か所あります。ここは神楽河岸、外濠の一部「飯田濠」の埋め立て地です。外濠というと、そのままお城の防備としての機能ばかり考えてしまいますが、水が流れているのですから当然水運にも利用されていました。神楽河岸の河岸(かし)とは船荷の陸揚げ場を意味していて、近くの揚場町と同じくこの辺りに陸揚げ場があったということです。神楽河岸は明治以降も戦後まで機能していたようですが、時が流れるにつれ飯田濠が臭い汚いと取り沙汰され、一九七〇年代に埋め立てられてしまいました。地域住民らによ

り景観維持等を目的とした反対運動も起きたそうですが、ここから再開発が進み今の発展した街並みへと変わりました。その後、埋め立て地には二区を挟んで飯田橋セントラルプラザという駅ビルができます。そして、その前年に区境も変わりました。外濠の真ん中だったのが、埋め立て地分を南北で新宿区と千代田区が分け合う形で区切るように。これは、事務棟と住民棟のあるセントラルプラザを輪切りにして制度的に問題が出ないようにする配慮です。両方の区に税金を納めないといけないそうですが、中間のショッピングセンター・ラムラには区境ホールという多目的ホールがあり、新宿と千代田の境界で開かれる音楽ライブ等を楽しめるそうです。


 というわけで、新宿区内の境界、特に東西の水をめぐって色々書いてみました。水の流れは土地の境目となり人の生活圏を定める一方で、人間もまた流れを作り替えます。しかし地図上だと時には元の流れが残り続け、時には線を引き直され、と色々な境目の有り様がわかりました。無味乾燥な点線に思われた区境も、調べてみれば物語が見えてくる。境界上の風景に現実には見えない点線を延ばしてみると、果てしなく代わり映えの無い景色にも意味が見えてきて、ちょっとほっとした気持ちになりました。            (今井 徹)


        

               @

       

      

     A千代田区・文京区との区境を千代田区側から撮影   首都高下の神田川から右は文京区

            


               

   B中野区・豊島区との区境を中野区側から撮影(拡大地図●の地点) 写真奥が新宿区、左が豊島区

   


C哲学堂通り道を挟んで右が新宿区、左が中野区

        

                          D中野区との区境手前の哲学堂通りから左に入っていく小道が区境



地図@ 東京実測図(東京都新宿区教育委員会編『地図で見る新宿区の移り変わり

    ―戸塚・落合編―』、人文社、142頁)


地図AB 白地図専門店(https://www.freemap.jp/)の白地図を基に作成


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2.助成していただきました!〜軽量折りたたみスロープ

 株式会社日本財託様の助成事業により、軽量折りたたみスロープを購入させていただきました。導入したダンスロープエアーは軽さだけでなく幅も約70センチ(収納時はその半分)と扱いやすく、外出した先々で遭遇する段差に設置できます。長さは65センチ・100センチの二種類、それぞれ最大15センチ、23センチまでの段差に対応可。備品を助成していただいた株式会社日本財託様に厚く御礼申し上げます。

 また、新宿区内在住の車いす利用者を対象にスロープの貸し出しも行っています。希望される方は下記の要項をご覧の上、当センターまでお問い合わせください。

  

品目

ダンスロープエアー65センチ・ダンスロープエアー100センチ

利用対象者:新宿区内在住の車いす利用者

貸出期間:原則一週間

費用:無料(但し破損・紛失等の場合は弁償していただきます。)


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3.【訃報】

 利用会員の刈谷恵以さんが(享年七九歳)が、去る3月22日に亡くなられました。当センターの役員・刈谷裕理事の奥様で、1988年の発足時より、陰になり日向になり活動を支えてくださいました。

 定期的に開催されるケアスタッフ勉強会「排泄介助」の会では、女性障害者が抱える排泄障害について、いつも当事者の目線からお話しいただきました。ケアスタッフが、障害について深く理解する機会を与えてくださったと思います。また、新年会では毎年しゃぶしゃぶの美味しいお肉と金粉入りのお酒を差し入れしていただきました。みんなでワイワイとご馳走になったことも、楽しい思い出です。

 長い間、本当にありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。

                

         卒業で東京を離れるケアスタッフとの最後のケアにて(2010年2月)の記念写真。

                  


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