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ゆうゆう123号

2021年 6月 21日発行

1.新宿の橋V 〜クヌギ林が片側で 夏草が〜


2.ケアセンターあれこれ


3.新型コロナワクチン接種に まつわるあれこれ


4.編集後記



日ごろな一枚

             

少し前から事務所に置き始めた二酸化炭素濃度測定器です。

コロナ前は気にも留めていなかったCO2濃度ですが、使い出すと気になるものですね。

そばでアルコール消毒するとバンッと数値が上がって真っ赤な液晶になるので、何だか

悪いことしたような気になります……。




1.新宿の橋V 〜クヌギ林が片側で 夏草が〜

             


 早いもので、もう梅雨の季節です。みなさんは新年度が始まって一息ついた頃でしょうか。それともGWが終わって7月の後半まで連休がないからと、どんより悲しみの中にいる頃でしょうか。この時期は毎年長く感じるものですが、そういえば(沖縄と奄美大島を除けば)梅雨の真っ只中に当たる、七夕は晴れるのでしょうか。ザアザア降りでは、織り姫と彦星が会う為に天の川へ橋を渡すカササギ達の苦労も偲ばれるものです。


 と、いうわけで今回も強引に橋の話に持ってきてやりました。本日ご紹介する新宿区の橋は田島橋。高田馬場駅から、元気で色とりどりのさかえ通り商店街に入って通り過ぎると見えてくる、神田川に架かった薄緑色の橋です。東は商店街、西は東京富士大学のキャンパスに挟まれて、なんとも有り触れた、賑やかな都会の光景。しかし、江戸時代にはものすごい田舎でした。江戸時代後半の『江戸名所図会』図@ではだだっ広い農地にポツンと佇む田島橋が見て取れます。ぐっと図に近付いて見ると、緩やかに反った板張りの橋に見えますが、他の史料によれば土橋(並べた丸太の床の上に土を敷き、平らにならした橋)とのこと。長さは6間(約11メートル)、名前の由来は、安藤対馬守というお武家様が雑司ヶ谷の下屋敷から狩りに出かける為に作ったからだそうです。じゃあ安藤橋か対馬橋じゃないの、という気もしますが、ここが歴史の面倒なところ。安藤対馬守さんというのは由緒正しい徳川家譜代の一族で、確かに代々対馬守の官位を賜っていましたが、どういうわけか江戸時代前半の一時期だけは但馬守(たじまのかみ)だったようです。それと橋を作った時期がたまたま重なっていたのでしょうか。(ちなみにこの一族の一人、幕末の安藤信正は老中まで上って幕政を掌る立場となり、今放映中の大河ドラマ『晴天を衝け』にも登場しています)

 さて、田島橋のあった辺りは江戸の端っこで、村で言うと下落合村と上戸塚村の境、つまり村の端と端の間。端の端にあればこそ、図@の長閑さも頷けるものですが、実はこの辺りは蛍の名所でもありました。なるほど川縁ですし、飲み水に使われた神田上水の水とくれば蛍の餌になる巻貝もたくさんいたことでしょう。田島橋を真ん中奥に置いた図Aも『江戸名所図会』からですが、まさに「落合蛍」と題して紹介しています。付された解説文を訳しますと「この地の蛍狩りは芒種(ぼうしゅ。二四節季の9番目、6月6日頃)の後から夏至(同じく10番目、6月21日頃)までが盛り。草木にすがるのを零れぬ露かと疑い、高く飛ぶのを天の星かと見誤る。遊覧に訪れた者は日が暮れるのを待ち、散歩して壮観を眺める。夜となって涼しくなり人々が寝静まる頃、風清く月が朗らかに光るようになって初めて帰路に就かねばと促すことを思い出すのも一興ではないか」とのこと。きっと梅雨のいい憂さ晴らしだったのでしょう、図Aでも老若男女が団扇や笹竹、籠なんかを持ち寄って蛍狩りに興じていてなんともほっとする光景。でも、田島橋はヒュードロドロの怪談の舞台でもあるのです。


            


 『怪談乳房榎(かいだんちぶさえのき)』という落語をご存知でしょうか。幕末から明治を生きた落語界のスーパースター・三遊亭圓朝の名作です。同じ圓朝の怪談噺なら『牡丹灯籠』の方がもう少しは有名かもしれませんが、乳房榎だって同じように男女関係のもつれがあって、幽霊が出て、復讐譚です。あらすじを簡単に説明しますと、まず菱川重信という腕のいい絵師の元に磯貝浪江という男が弟子入りしてきます。この男、筋が良くてめっぽう気配りができていい奴かと思いきや、重信の美しい妻・おきせに横恋慕して寝取ろうとする悪役。重信が仕事で南蔵院(豊島区高田)に行っている晩、浪江はまんまと家に上がり込み、おきせに一人息子の真与太郎を殺すと脅して関係を持つように。しかも彼はそれで満足せず、重信を殺害しようと思い立つのです。計画はまず重信の家の下僕・正介を抱き込み、重信を南蔵院から落合に蛍狩りに誘い出させ、自分は潜んで闇討ち、というもの。その時の浪江の台詞で田島橋周りの様子がわかるのですが、こんな具合です。「私はな、落合の田島橋のなだれに小坂がある、其(その)左手は一面の薄(すすき)で、赤楊(はんのき)が所々にある小高い丘だから、其生い茂った薄の中に隠れておって、先生を遣り過ごして竹槍でたゞ一突にいたす」(『圓朝全集』巻八より)と。浪江は用意周到、その夜は正介に酒と弁当を持たせて重信をほろ酔いにします。重信はひょろひょろと千鳥足で田島橋を渡り、小坂に行くと……「此の傍(かたわら)は一面の藪で薄が所々に交じってをりますが、まだ時候が早いから穂が出ませんで、櫟林(くぬぎばやし)が片側で、夏草が茂って居り、いろ?な虫が啼き連れて物凄うございます」(同じく『圓朝全集』巻八より)と。前の蛍狩りと打って変わって、怪しく恐ろしい夜の景色が目に浮かぶようです。この後浪江が茂みより飛び出して、竹槍でブスリと重信の足を突き、正介と二人がかりでとどめ。惨劇の後、浪江に言われて正介は南蔵院に駆け込みます。先生様が狼藉者に殺された、坊主達にそう怒鳴りますと、彼らはぽかんと呆れるばかり。先生ならとっくに帰ってきて本堂で仕事をしているぞ……何の気無しに告げられます。泡食った正介が恐る恐る本堂を覗くと……! と、まあ乳房榎の怪談としての本領はここから、この後も見所がたくさんあります。最終的に浪江は重信の息子・真与太郎に討ち取られるのですが、続きが気になる方はぜひ落語や書籍で確認してみてください。そんなわけで、話がずいぶん仰々しい方向に反れてしまいましたが、それで言うと田島橋周辺には怪獣の伝説も伝えられているのです。


 


 その名も「犀」。と言っても、角が生えててデッカいあの犀とは違います。江戸時代後半の紀行文『遊歴雑記』によれば、田島橋の下流に犀ヶ淵というのがあり、そこもやはり「もの凄い(気味の悪い)」ところだったそうですが、月光が明るくて綺麗な場所でもあったようです。文化11年(1814年)の夏、楽山翁という人が、家族連れで犀ヶ淵の川筋に釣りに行きます。川端に来ると、逆流する水の勢いが一際凄まじくなり、渦を巻くかと思われた時、忽然と水中から怪獣出現。犀の様子は「年をとった猫に似て、犬ほどの大きさ。毛色は白地に赤い斑。両眼は大きくてまん丸で、口は耳元まで裂けている。口を開き赤い舌を出して両手は頭上にかざし、怒り顔で人々を睨み付ける。頭の毛は長くて目を覆い、腹と思う辺りまで半身を水上に出す」といった風で、あんまり怖くないような気もしますが野生動物が怒って睨んできたらまあ誰だって身の危険を感じるはず。犀はしばらく人々を見つめた後水中に戻ったそうですが、恐れおののいた楽山翁は宿所に帰ってその姿を絵にして文と詩を付しました。それが『遊歴雑記』の作者・十方庵敬順の目にも留まったようで「カワウソの長い年月を経たのか、それとも世に言う河童などというものだろうか、絵で見るだけで身の毛もよだつほどなのだから、まして思わず本物の怪物に会った人の恐怖は言うまでもない」としみじみ感想を述べています。だからきっと本当はとても怖い怪獣だったのかも。実は昔話や妖怪にも詳しい学者の柳田国男もこの犀について『山島民譚集』という著書の中で紹介しています。そこでは犀とは本来日本にいない動物であり、あるいは「サエ」や「サエト」という「かつて境の神を祀っていた恐ろしい場所」が「サイ」のルーツかもしれないという考察がありました。確かに犀ヶ淵のある田島橋の辺りも村と村の境でしたね。


  


 と、取り留めも無く江戸時代の田島橋と周辺の話をしてきました。穏やかで綺麗な反面、得体が知れなくて恐ろしいところでもある、まさに都市から見た郊外のイメージそのものといった印象を受けました。蛍や怪談で語られたのも今は昔、怪獣もいなくなって、夜でも明るい都会に変わり果てましたが、今度はどんな物語が作られていくのでしょうか。                             (今井 徹)

              

図@『江戸名所図会』(国立国会図書館デジタルコレクション、「江戸名所図会12 18コマ」)

図A『江戸名所図会』(国立国会図書館デジタルコレクション、「江戸名所図会12 19コマ」)

 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2559051?tocOpened=1


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2.ケアセンターあれこれ

4月


・令和2年度新宿区障害者福祉活動事業助成金報告書提出(機関紙)

・令和2年度地域福祉振興事業助成金実績報告書提出(工房)

・令和3年度新宿区障害者福祉活動事業助成金申請書提出(機関紙)


5月


・新宿区社会福祉協議会地域ささえあい活動助成金交付事業申請書提出(運動会)

・新宿区唾液PCR検査受検


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3.新型コロナワクチン接種にまつわるあれこれ


 新型コロナウイルス感染症の終息はまだまだ先のようで、マスクをするのがとてもつらい蒸し暑い日々がまた巡ってきました。最近は、誰かと会えばワクチン接種の話になりますね。新宿区でも、区の関連施設での集団接種、地域の医療機関での個別接種が次々と行われています。

 利用者の方々の事情は皆それぞれ。予約開始日の朝から電話やインターネットを駆使して何とか集団接種の予約ができた人、ケアマネージャーに替わりに予約の手続きをしてもらった人、かかりつけの病院を予定している人、訪問診療で自宅でのワクチン接種を行う人、通い慣れた福祉施設で集団接種する人。予約しても会場までの移動のケアが必要であれば、さらに介助の調整や介護タクシーの手配も必要です。一人暮らしであれば副反応をはじめ漠然とした不安に備えて、通常よりもケアの時間を延長したりもしています。一方で、現段階では接種しないという選択をする方々も。医学的な観点からワクチン接種が困難であったり、もう少し世の中の動向を見て慎重に判断したいと考える場合もあります。ご本人自身が副反応のつらさや身体状況を説明することが難しければ、家族はまた悩ましい。家族間での考え方がそれぞれ違って、互いに衝突することもあります。

 最近、ワクチンハラスメントという言葉を耳にするようになりました。ワクチンの強制や不利益的な扱い、同調圧力や差別に繋がるような具体的な例が出てきているようです。コロナの終息は、誰しもが願っています。障害の有無に関わらず、感染症予防の効果と副反応のリスクの双方を踏まえ各自が選択したことに対し、謙虚に許容する社会でありたいものです。



4.編集後記

最近「キリンホームタップ」でビールを飲み始めました。作りたてのおいしさを自宅で味わえるというのが売りです。セッティングもまあ簡単だし、自分で注ぐから、量や泡の調整が出来て、それなりにいいとは思います。

しかしながら、「キリンホームタップ」で飲めば飲むほど、お店の生ビールやビアガーデンが恋しくなるのは何でだろう??

因みに、品薄気味の「スーパードライ 生ジョッキ缶」は、泡がもの凄い! 今までに無い楽しさが味わえます。是非一度お試しあれ。



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